・旧字体の中には、古くないものがある

漢和辞典で「寿」の字を引くと、こう書かれていることがあります。

『「寿」ことぶき、ジュ   「壽」:旧字体』

それを見てこんな風に思うかもしれません。
"「寿」の旧字体は「壽」って書いてある。じゃあこの字は楷書ができた当時は「壽」ってかかれてたのかあ。"
・・・しかし、残念ながらこれは間違いです。

実は「寿」の字は楷書が成立して以来、ふつう下図Aのように書かれてきました。

図A 伝統的な「寿」の字形(管理人の手書き) 

(楷書が成立して以来というか、それよりも前の隷書の時代からそうです。)
そして、近代になるまで「壽」の字はなかったと思います。
(*図Aの形が圧倒的に多いですが、「壽」が存在しなかったかどうかは要検証です。すいません。)

おそらく・・・。 この、ふつう旧字体とされている「壽」は、近代に「康煕字典(こうきじてん)」という大きな漢和辞典が中国で作られたときに初めて出てきたものです。
(康煕字典は手書きの伝統を無視して「壽」という字を新たに作り、下図Aの字を収録しませんでした。)ですから、「ことぶき、ジュ」の字は、楷書ができた時から近代まで「壽」とは書かれていません。
(このことは、書道字典を引いてみればわかります。)

この字に限らず、漢和辞典において「旧字体」(あるいは「正字体」)と書かれている漢字の中には、手書きの楷書の伝統からするとおかしい字がたくさんあります。
つまり、そのような漢字の中には「昔ながらの字」ではない(近代生まれの)字が多数あるのです。
(*そのような字を「康熙字典体」などと呼ぶことがあります。)

(しかも、そういう字ってだいたい「書きにくい」んです。たとえば「真」の旧字体の「眞」は、左右のバランスがとりにくい形をしてます。この字は隷書以来、常用漢字のように「真」と書かれてきました。)

「旧字体」といっても、近代に生まれたものもあるのです。

・おまけ

右上に伝統的な「ことぶき」
図B 右上の1文字目に伝統的な「寿」がある 




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