1.九成宮醴泉銘より
欧陽詢「九成宮醴泉銘(『きゅうせいきゅうれいせんめい』などと読む)」の一部。
2文字目の「徳」の字に注目。
ちなみに欧陽詢(おうようじゅん)は唐の時代に活躍した非常に有名な書道家で、「初唐の三大家」の一人。
また、この作品は帝の勅命によって欧陽詢が書いたもの。略字を使うとは考えられない。
2.孔子廟堂碑より
虞世南「孔子廟堂碑(『こうしびょうどうひ』などと読む)」の一部。
2文字目の「徳」の字に注目。
虞世南(ぐせいなん)も、初唐の三大家の一人。
また、この「孔子廟堂碑」は虞世南の最高傑作とされている。これも、略字を使うとは考えられない。
このように常用漢字の「徳」の字は、昔から名品とされている書道作品の中にある字です。
また他の古典の書道作品の中にも、新字体のこの字は山ほどあります。
むしろ旧字体の方が、例が少なめです。
常用漢字の「徳」は、漢和辞典では「俗字」とされている場合があります。
しかし、この字は決して「俗字」や「略字」などではありません。
このような字は、新字体の中にたくさんあります。
(「来」「狭」「麦」「黒」「僧」「青」「真」「緑」「縁」「奥」「者」「恵」「恒」「乗」など)
興味があったら書道字典を引いてみてください。略字だと思われている漢字でも、そうではないものが沢山あることが分かるはずです。
「角川書道字典」などがおすすめです。